臨床看護学講座の仲間と。
右側が田戸先生です。
山口県立大学看護学部卒業後、山口大学医学部附属病院で看護師として勤務。2007年に山口大学大学院医学系研究科に助手として入職。2018年より現職。2013年急性・重症患者看護専門看護師取得。2019年山口大学大学院医学系研究科保健学専攻博士後期課程修了(保健学博士)。
私が教育研究職についてから14年が経ちました。その間一貫して行ってきたことは、臨床現場に直結した看護研究を行うということです。また、研究によって見出したことを教育にも活かしてきました。教育の現場としては、当大学には学部教育のほかに、急性・重症患者看護専門看護師コースがあります。このたび、コラムを書かせていただく機会を頂きましたので、これまでの取り組みとこのたびのコロナ禍での工夫についても述べたいと思います。
私は、ICUに所属していた際、心臓血管外科患者の早期回復を代表として4本の看護研究に携わりました。毎年のように看護研究を行っておりましたが、研究をすることで普段見えなかったものが違うようにみえ、どうすることが良いということがわかり、わくわくした経験をすることができました。こうした経験が、教育・研究職に進んでみようと思うひとつのきっかけでした。
大学においては、急性・重症患者看護専門看護師コースの院生の研究の補助を行っています。院生の研究は、終末期・せん妄・家族看護・看護教育・看護技術など様々ですが、どの研究においても新たな発見があり、看護を見出す楽しみを感じています。看護研究を行う過程では、批判的思考と論理的思考、適切な言語化、アサーティブなコミュニケーションが欠かせません。こうしたスキルは専門看護師の実践の基盤となるもので、現在23名の専門看護師が当コースを卒業後活躍しておりますが、年5回開催されるゼミ会には大学に戻ってきて切磋琢磨する機会としています。このたびのコロナ禍においては、全国各地に散らばる院生が不便な山口県に来訪せずともディスカッションにZOOMを通して参加することができました。
学部教育においては、私のメインテーマである気管挿管患者の口腔ケアを中心に学部生が研究活動を行ってきました。気管挿管患者の口腔ケアについて学生時代に授業で習ったものは22%であるという結果があり1)
、口腔ケアの中でも難易度の高い状況の修練はほとんどなされていません。そこで、ゼミ生は気管挿管患者の口腔ケアをいつでも学びたいときに学べるようにするために、オンデマンドによる解説を行うことにしたのですが、単なる解説では研究になりません。そこで、自己学習効果を高めるために、ADDIEモデル2)を用いて学習者の興味・関心を高める工夫をしました。そのために、口腔内細菌を「みえる化」することにしました。「みえる化」するために利用したのが、「バクテリア・セルフチェッカー見る菌」です。見る菌は、スマートフォンを用いて、唾液や歯垢の中にいる細菌の様子について、顕微鏡を通じてみることができます。学生はこの見る菌の画像とグラム培養した画像をうまく組み合わせ、口腔ケア前・ブラッシング後・口腔ケア後の変化の様子を非常にわかりやすく解説しました。この視覚的教材を生かした群は通常の教育群よりも理解が良く、学習者の興味・関心を高めた学習効果の高さがわかった研究となりました。このような成果は臨床現場で教育機会が減少している新人看護師等にも利用できる可能性があり、今後検討していきたいと考えています。
これまで気管挿管患者の口腔ケアに関しては、ICUや一般病棟など多くのフィールドで研究を行い、学部教育でも複数行ってきました。それらが全て私の中でつながり、また次の研究テーマとなっています。コロナ禍の状況にあり、普段通りできないことが多くありますが、教育・研究を止めることはできません。学生へ看護の魅力を伝え、より良い成果を臨床現場に届け、その先にいらっしゃる患者様に還元できるよう努めていきたいと思います。