学士編入コース担当の先生お2人と。
右の方が森田先生です。
聖路加看護大学卒業、東北大学大学院法学研究科公共法政策専攻、東北大学大学院医学系研究科保健学専攻修了(看護学博士)。東北大学病院などでの勤務を経て、2019年4月より現職。
行政法という言葉をご存知でしょうか。
行政法は、人々の生活に密接する行政サービスや社会の仕組みについて定める法律群を指します。たとえば母子保健法、児童福祉法、健康保険法、国民年金法、医療法、介護保険法。これらはすべて行政法1)2)であり、人々のライフステージ全般に関わりのある法律であることが分かります。そして看護の対象もまた、周産期の母子から小児、働く世代から高齢者までと、すべてのライフステージにある人々です。また、病院だけではなく、自宅や地域、学校や働く場まで、看護を提供している場も多岐にわたります。人々の生活を支えることにおいて、看護と行政法には多くの接点があると私は考えます。
看護を必要とする人は、様々な行政サービスの給付を受けている場合が多いです。そして、真にその人を支援するためには、ただ金銭等を給付するだけではなく、保健医療福祉の専門的知識と技術をもって関わることも必須です。しかし、その部分の法律の趣旨が十分に理解されず、また行政機関の組織的事情から、適切な関わりが行き届いていないケースもままあります3)。
また、地域の保健医療福祉体制の構築にあたっては、様々な意見の調整が必要です4)。ここでいう様々な人とは誰を指し、意見調整をどのようにすべきでしょうか。この点、看護職は、多職種を巻き込みそれぞれの役割を調整すること、地域に入り込み関係を築くこと、地域の資源を発見することに強みを持っています。人々と行政との活動の推進において、看護職のスキルを活かすことができるはずです。
看護職、とりわけ行政機関で活躍する保健師においては、法的根拠がなければ看護の提供はままなりません。しかし、法律があるだけでは支援は成り立たちません。看護と行政法は、人々のライフステージを支える両輪のようだと感じます。
看護の対象はありとあらゆる場所に広がってきています。それに応じて看護学が培ってきた知識や技術、経験があります。誰もが生活しやすく、健康に暮らし、そして看護職が働きやすい社会の実現に向けて、行政法の視点を取り入れることができないか、行政の活動や行政法の領域に看護の力を取り入れることができないか。以上が、私が関心をよせる課題です。
私は現在、看護学以外の専攻の学士を持つ学生が在籍する3年次学士編入コース5)を主に担当しています。看護の知識と技術の修得に励む彼らですが、看護が実に多くの場で提供されていること、一方で、看護の力だけでは解決困難な課題も社会にはあることに、これから気付くでしょう。あるいはもう気付いているかもしれません。彼らがすでに持っている知識やキャリア、そして看護の力でもって解決策を示すことのできるナースになれるだろう学生さんの姿からも学ぶ日々をおくっています。